大切な人を撮り続ける。

July 28, 2020

こんにちは!筑波大学写真部、大学院2年のnobitaです。


私は、家族や友人を主な被写体としています。

その中でも特に、祖父の写真は意識的に撮り続けています。


私の祖父は大工です。80歳になった今も現役で働いています。

私は幼い頃からずっと、実家の作業場で材木を削る祖父の背中を見て育ちました。


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祖父にカメラを向けるようになった当初は、家の作業場に顔を出して撮らせてもらう程度でしたが、やがて、実際に現場で家を建てている様子を撮りたいと思うようになりました。


そこで、昨年の春休み、祖父にお願いをして現場に向かうトラックに乗り込みました。


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現場での仕事を見学してまず驚いたのは、家の作業場で祖父が丁寧に加工した材木が緻密に組み上げられていく様子でした。


また、現場には住宅建築に関わる様々な業種の人々が出入りし、棟梁である祖父がその人たちをまとめ上げていました。


私は、祖父の新たな一面を発見したような気持ちになりながら、シャッターを切りました。

それからも祖父の現場には何度か足を運び、その度に写真を撮り続けました。


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今年は新型コロナウイルスの影響で1ヶ月以上大学が閉鎖されましたが、丁度そのタイミングで祖父から仕事を手伝って欲しいと頼まれました。


私は祖父に大工の仕事を教わるまたとない機会だと思い、引き受けることにしました。


それまでは現場に行っても離れたところから見学するだけでしたが、一緒に仕事をしながらカメラを構えれば、新しい視点を発見できるのではないかという期待も膨らみました。


手伝いは屋根の造作から始まりました。


屋根に上がるのは生まれて初めてだったので、祖父の背中を追って恐る恐る梯子を登りました。


高所でも平然と仕事をこなしていく祖父の凄さを改めて感じました。


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手伝いを始めて一週間が過ぎると、屋根仕事にも段々と慣れてきました。


よく晴れた日には眺めが良く、吹き抜ける風も気持ちがよかったです。


マスクとヘルメットをして仕事をしていたら、頬にデーモン閣下みたいな日焼けもできました。


屋根から見下ろして撮った祖父の写真は、まさに新しい視点の発見と言えるかもしれません。


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8時から18時の仕事を月曜日から土曜日までこなす日々が続くと、徐々に疲労が蓄積してきました。


祖父に「よく身体が持つね」と声を掛けると、「若い頃は全く疲れなかったけど、この歳だと流石に疲れはあるよ」という返事でした。


23歳の私と80歳の祖父が大体同じくらいの体力なのですから、祖父の若い頃の体力は計り知れません。


疲れていると言いながら、翌日の準備で日曜日に仕事をしていることもあるので、大体同じくらいの体力と言ってしまうことすらおこがましいのかもしれません。


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私は祖父の手が好きです。


ゴツゴツしていて、日に焼けていて、シワが刻まれていて格好良いからです。


小さい頃、祖母に祖父と初めて会った日の話を聞いたことがあります。


親同士に縁談を進められて会うことになったものの、祖母は緊張して祖父の顔をまともに見ることが出来ず、俯いた視線の先にあった祖父の手だけを信じて結婚を決めたそうです。


その話を聞いた時は、笑い話だと思っていましたが、今ならなんとなく当時の祖母の感覚が分かるような気がします。


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祖父の写真を撮っていると時折、"今が既に懐かしい"という感覚に囚われます。


目の前の光景や交わす言葉が、遠くにあるような気持ちになります。

その時、私の意識は未来にあり、やがて遠い過去になるであろう今を懐かしんでいるのです。


アルバムを見返した時、自らの記憶と深く結びついた写真は心に刺さります。


ですから私は、"今が既に懐かしい"と感じた時、祖父との大切な思い出に付箋を貼り付けるような気持ちでシャッターを切ります。


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この記事を読んでいるあなたにもきっと、大切な人がいると思います。


その人との"今"を写真に収めてみてはいかがでしょうか?


その写真はきっと、将来のあなたの財産になるはずです。


©︎ 2020 筑波大学写真部

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